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最新の研究を紹介する筆者のウェブサイト第1部の最後として、私のウェブサイト「グローバルーリスクーコミュニケーションズーニュースレター」について紹介させて頂きます。
このウェブサイトでは、「ニューイングランドージャーナルーオブーメディシン」「ランセット」「米国医師会雑誌」「英国医学雑誌」などの代表的な医学専門誌に掲載される、がん・栄養・環境リスクに関する最新の論文のうち、私自身が興味を持ち重要と考える研究について、解説記事を書いて掲載しています。
解説記事では、研究結果の要約だけではなく、その研究の意義や問題点についてもコメントするようにしています。
できるだけ専門用語を使わないよう心かけていますが、使う場合には自作の「用語解説」へのリンクをはって説明するようにしています。
新しい記事の全文を、メールニュースとして、お申し込み頂いた方に送らせて頂いています。
おもな読者は、同業の研究者と、現場の医療保健専門職が中心ですが、一般の市民の方々や、ほとんどの全国紙の、科学部や医学報道担当の記者にも読んで頂いています。
ウェブサイトを開設したのは、私かH大学に留学していた1999年10月でした。
いくつかきっかけがありました。
当時のアメリカは「ネットバブル」たけなわで、一般市民に医学ニュースや健康情報を提供する企業等のウェブサイトが次々と立ち上がるところでした。
ボストンを走る市電の車体全部が、そのような企業の広告で塗りつぶされていたこともありました。
そうした状況を目の当たりにして、日本にも同じようなウェブサイトが必要だと考えました。
また、H大学の研究グループが、インターネット上で簡単な質問に答えると様々な部位のがんリスクを計算するプログラムを搭載した一般向けのウェブサイト「あなたのがんリスク」を立ち上げました。
トップクラスの研究者が、市民向けの広報にも熱心に取り組んでいることに、刺激を受けました。
けれども、一番直接的な動機は、代表的な医学専門誌に報告される重要な研究の多くが、日本のメディアでは報道されないため、これらの研究を日本社会に広く伝える必要性を、以前から感じていたことです。
ウェブサイトの運営は、まったく個人的にしていることなので、自分の物理的.精神的状況によって解説記事を書く頻度にムラが生ずるのが欠点です。
それでも、がん・栄養・環境リスクに関する重要な研究の、少なくとも一部は紹介できているのではないかと思います。
本書の第2部も、ここに掲載した解説記事がもとになっています。
読者の皆さんにも、いちど訪れて頂ければ幸いです。
総論にあたる第1部では、健康情報の信頼性や重要性を判断するための方法について解説しました。
各論にあたる第2部では、おもに2000年から2001年にかけて、代表的な医学専門誌に掲載された論文の中から、がん・栄養・環境リスクについての研究を選んで紹介します。
「メディアと医学」や「心理」にまつわる研究も、いくつか取り上げました。
「医学専門誌に掲載された論文」というと、とっつきにくいイメージがあるかも知れません。
けれども、そうした先入観をひとまず棚上げにして、興味を持たれた部分を読んでみてください。
これまで常識だと思っていたことが否定されていたり、自明だと考えていたものが意外に不確かなことに、たびたび気づかれることでしょう。
理論や仮説をつきつめていく際の、医学研究のダイナミズムを感じ取っていただけるのではないかと期待しています。
紹介する研究のほとんどは、「定評ある医学専門誌に報告された、人間集団を対象とする研究」です。
つまり、6段階のフローチャートの、「ステップ4」までをクリアした研究になります。
無論だからといって、これらの研究結果がみな正しいというわけではありません。
多くは、こんにちでも未解決の問題に対する、試行錯誤のひとつに過ぎません。
そのため、研究の問題点や限界についても指摘し、筆者なりのコメントを加えました。
それでも、私たちの健康にすぐ役立つ情報も、たくさん見つけていただけるのではないかと思います。
1がんと栄養、どこまで分かっているか「けっきょく、がんと栄養について、この点をまず明らかにするために、告書について紹介しましょう。
なにがどこまで分かっているのか」がんと栄養についての研究を総まとめにした、有名な報世界がん研究基金の報告書。
1994年、世界がん研究基金と米国がん研究機関は、国際的な立場からがん予防の提言を行うために、著名な科学者を中心とする委員会を結成しました。
15名の委員と19名の協力者からなるこの委員会では、外部の専門家の協力を得ながら、がんと栄養についての4000本以上の論文を集め、その内容をくわしく調べました。
4年間にわたる作業のすえ、1997年10月に、報告書「食物.栄養とがんの予防−国際的視点から」を刊行しました。
この報告書では、それぞれのがんと栄養との関係を、表8(72、73ページ)のように判定しています。
実際の人間集団で行われた研究をおもな根拠にして、それぞれの研究の信頼性を考えながら、判定しました。
必要に応じて、動物実験や、細胞がんと栄養、どこまで分かっているか1レベルでの研究も加えて判断しました。
表を見ると、上を向いた矢印や、下を向いた矢印があります。
矢印が上を向いているのは、「その食品を多く食べると、そのがんになるリスクが上がる」という意味です。
矢印が下を向いているのは、そのような「リスクが下がる」という意味です。
矢印の数を見ると、3本、2本、一本の場合があります。
3本の矢印は、その判定が「確実」(conv@nc@ng)という意味です。
2本の矢印は「おそらく確実」、一本の矢印は「可能性がある」(poss@ble)という意味です。
たとえば、表のいちばん左上のところを見ると、「口腔がん」と「野菜」がまじわる欄に、下向きの矢印が3本あります。
これは、「野菜を多く食べると、口腔がんになるリスクが、確実に下がる」という意味になります。
3本矢印の「確実」や、2本矢印の「おそらく確実」という判定は、もうすでに十分な科学的根拠があるので、そのことを生活に取り入れる価値があることを意味しています。
委員会では、20件以上の研究で一致する結果が示されているような場合に限り、「確実」という判定を行いました。
これより根拠の弱い場合に、「おそらく確実」という判定を行いました。
これに対して、一本矢印の「可能性がある」という判定は、「これまでの研究で、そのような可能性が考えられているが、まだ十分な根拠があるとは言えないので、生活に取り入れるには不十分」という意味です。
「食物繊維を多く食べると、大腸がんのリスクが下がる」「(動物性)脂肪を多く食べると、乳がんのリスクが上がる」「お茶を多く飲むと、胃がんのリスクが下がる」今日の日本では「確立した事実」であるかのように思われているこれらの仮説も、この報告書では、すべて一本矢印の判定になっています。
つまり、「そのような可能性もあるが、実際の生活に取り入れるだけの、十分な根拠はない」と結論づけられているのです。
この表を見ると、矢印のない空欄があることに気づきます。
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